光のもとでⅠ
 警護は警護でも、雅さんに関しては外界との接触を遮断するためのものだったはず。
 それが見事に覆されていた。
 何かない限り秋兄は人事に口を挟まない。
 普段は開発の仕事が中心の秋兄が気づかなかったのはともかく、どうしてほかの人間が気づかなかったのか、とイラつきを覚える。

 雅さんは翠に対して激しい憎悪の念を抱いていた。
 佐々木の口車に乗せられ、なんの疑いもなく秋兄と見合いをして結婚できると思っていた女。
 めでたい人間だとは思うものの、佐々木という男は相当ずる賢く、口がうまかったに違いない。
 雅さんは朔さんと愛人の間に生まれ、本妻に引き取られた。
 が、結局のところ、家の人間とはうまくいくことはなかった。
 佐々木はそこを言葉巧みにつついたのだろう。
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