光のもとでⅠ
 道場にはケンだけが残っていた。
「悪い、あとはやっておくから」
「は? おまえ何言ってんの?」
「そのままの意味だけど……」
「俺がなんのために待ってたと思ってんだよ」
 そんなこと知るか……。
「今日の練習の成果を見てもらうために決まってんだろ?」
 何がどう決まっているのかと訊きたかったが、待たせていたことに変わりはなく、ケンの時間を無駄にしたと思えば、そのくらいのことはすべきかとも思えた。
 目の前で射法八節が行われる。
 遠的競技は射手から的まで六十メートル。
 二手、つまりは全部で四射見たあとアドバイスをいくつかしてから道場を出た。
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