光のもとでⅠ
 俺はハナの歓迎をかわし、廊下の奥にある階段へ向かう。
 背中に母さんの視線を感じていた。
 何か言いたくて、でも何も言えない。
 そんな顔をしていた。
 ファイルを見たのだろう。
 そして、俺がじーさんに何か命じられたことを察した。
 何を命じられたのか、俺に訊いたところでどうできるものでもない。
 だから口にしない。
 母さんはそうやって自分が藤宮の人間であることを負い目に感じる。
 どうにもならないことを負い目に感じて、感じ続けて――。
「家なんて選んで生まれてこれるわけじゃない」
 そんなことならとう昔に自覚済み。
 誰が悪いわけじゃない。
 誰が悪いわけでもない――。
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