光のもとでⅠ
 自室のドアを閉めると父さんに連絡を入れた。
『急ぎか?』
「父さんにとっては?」
 この一言で母さんに関することだと伝わるだろう。
『話せ』
「できるだけ早くに帰ってきて」
『具合が悪いのか?』
「身体じゃなくて心のほう』
『……誰に何があった?』
 こんな訊き方も、らしい、と思う。
 母さんが気に病むとしたら俺たちに何かがあったときだ。
「そこは考えなくていい」
『おまえか。……会長に試練でも出されたか』
「そんなところ」
『わかった。……あと一時間で帰る』
「よろしく」
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