光のもとでⅠ
 そうだった。父さんはこういう人だった……。
 藤宮に婿入りしていながら、その名になびくこともひれ伏すこともせず、一族の中で淡々と立ち回ることのできる人間。
 ただひとり、母さんだけに重きを置く。
 それがじーさんに気に入られた一要因。
「……さぁ、初めての試みだしうまくいくかは不明」
「らしくないな?」
「じゃぁ、藤宮らしいことをひとつ――何か起きれば物証だけは逃がさない」
 父さんがふ、と笑うと同時にトーストのチン、という甲高い音がキッチンに響いた。
「うまくいこうが失敗に終わろうが、いつものおまえで帰ってこい」
「……心得てる」
「ならいい」
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