光のもとでⅠ
 階段を上がると翠のクラスが目に入る。
「……この機会を逃がす手はないな」
 俺は弁当を持ったまま翠のクラスに踏み入る。
 すぐに人の視線を集めたが気にはせず、まだ俺には気づいていない一画へと近づいた。
 窓際の、翠や海斗たちが集まる場所へ。
 昨夜のことを問い質すという口実もあったが、それ以外の目的もある。
 自分が翠をかまうことで越谷を刺激することになるのか、それとも牽制することになるのか――。
 もし術をかけられているのだとしたら、それは音声によって発動するのか、視覚から発動するのか。
 吉と出るか凶と出るか、誰にも判断することはできない。
 何も起こらなければいい。
 そう思う自分と、起こるならとっとと終われ、と思う自分がいた。
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