光のもとでⅠ
「あ……なんか寒いからスープを飲もうかと思って」
「翠葉にしては珍しいわね? お弁当とスープの両方を食べるだなんて」
「あぁ、そうだな。食べられるのなら両方食べるに越したことはない」
 簾条も俺もわかっていて言っている。
 翠は弁当を食べることを放棄し、サーモスタンブラーに手を伸ばしたのだろう。
 けれど、それを易々と見逃す俺や簾条でもない。
 俺と簾条は同質の笑みを浮かべ、
「まさか、それだけなんて言わないわよね?」
「まさか、それだけとは言わないよな?」
 同じタイミングで同義の言葉を発すると、翠は蚊帳の外になりつつある海斗と佐野、立花に視線のみで助けを求めた。
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