光のもとでⅠ
 俺が笑うのはこんなときくらいなものだろう。
 あぁ、だからケンが珍しがったのか……。
 今朝の会話に合点がいく傍ら、
「もちろんっす! そんな噂、誰が流すもんですか」
「末恐ろしくて流せません」
「最新情報より命のほうが大切です」
 そんな声がところどころにあがる。
 翠に視線を戻すと、まだ頭が飽和状態なのか視線が宙を彷徨ったままだった。
 だが、もう少しで昼休みも折り返し地点というところ。
 食べるのが遅い翠にはそろそろ食べ始めてもらわないと困る。
「翠、いい加減に箸を持て」
 翠は箸を持つでもなく、急に俯いた。
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