光のもとでⅠ
「あぁ、少し考えごとしてました。何考えているんだかわかりかねる年寄りが身内にいるもので」
 わかりかねるのはじーさんのみならず、なわけだが……。
「じゃ、俺は大学にいるから」
 御園生さんは一歩翠から離れた。
 翠は懇願の目を向けるが、御園生さんは目を細めて優しく笑う。
「何かあれば電話しておいで。俺も私道に入る許可は得ているから」
 翠の頭を軽く二度撫で、やけにあっさりと大学の校舎へ向かって歩きだした。
 翠はその後ろ姿を名残惜しそうに、後ろ髪引かれるように見ている。
 なんていうか、自分が後ろ髪になってついていってしまいたいとでも考えていそうな目。
 俺たちが今いる場所は大学脇の私道入り口。
 ここから歩いて十分ほどのところを左に入ると庵がある。
 その逆、右へ行くと俺や秋兄の家がある。
 今日は先週のリベンジで藤山に来たわけだけど、翠は一向に俺のことも藤山も見ようとはしない。
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