光のもとでⅠ
 翠が気にしているのはやり取りそのものではなく会話の内容。
 自分が渦中にいるかと思うと、気まずさに拍車がかかるのかもしれない。
 でも、それが事実で、そろそろ現実を受け入れてもらわないと困る。
 翠はやけにあっさり手を引いたけど、俺たちは一度手を伸ばしたものをそう易々と諦められる性格ではない。
 いい加減、ひとり自己完結するのはやめてくれないか。
 空気を和らげたい。
 そう思う気持ちと文句を言いたい気持ちがせめぎ合う。
「この藤棚の話、前にしたっけ?」
「え?」
「藤棚が五角形になっているでしょ?」
「あ、はい」
「これはさ、俺たちが生まれるたびにじーさんとばーさんが一本ずつ植樹してくれたんだ。で、最終的には五人で五本、五角形」
 秋兄は普通に話、翠はその話に耳を傾ける。
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