光のもとでⅠ
「一定の背丈で剪定してあるからもう高さの差はないけど、植えられたばかりの藤木はとても小さくてかわいかったんだよ」
 秋兄は昔を懐かしむように話す。
 俺にはない記憶の話を。
 俺が物心つく頃にはすでに自分の身長を越す高さだった。
 小さかった頃の藤の木なんて俺は知らない。
 そんな、懐かしむように話されるとなんだか――。
 ……あぁ、そうか。
 いつだって俺は秋兄との年の差にコンプレックスを感じるんだ。
 翠が絡むとなおさらに。
 自分にできることが異様に少なく思える。
 車の運転ができるわけではないし、秋兄みたいに社会に出て自立しているわけでもない。
 年の差に嫉妬しても意味がないことなど嫌というほどにわかっているのに、それでもどうにもならい。
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