光のもとでⅠ
「でも、そのキスマークがどうしてこの手につながるの?」
 桃華さんはきちんと話の主軸を戻してくれる。
 それに、首の傷やこの手の理由までは海斗くんだって知らない。
「実はね、私もよくわからないの……」
「「「「はっ!?」」」」
 一斉に同じ言葉を口にする。
「……一番最初は、気づいたらお風呂で首をウォッシュタオルで内出血するほど擦っていたのを栞さんに止められて、二度目は寝てる間に自分で掻き毟っちゃったみたいで……」
 言うと、すぐに桃華さんの手が首筋に伸びてきて髪の毛を避けられた。
「何、これ――」
 その一言にみんなが腰を上げる。
「だから……わからないの」
「翠葉……俺、こんなの聞いてないよ?」
 海斗くんが厳しい顔を私に向けていた
「うん、昨日の出来事だから……」
 そう、キスマークを付けられたのは二日前だ。
「嫌だったの?」
 と、眉間にしわを寄せて訊いてきたのは佐野くんだった。
「実はね、それすらもわからないの。ただ……消したいとは思った。それだけしかわからないの」
 途端、桃華さんにぎゅっと抱きしめられた。
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