光のもとでⅠ
 壁が薄い? 壁が柔らかい? ――とにかく、そんな感じ。
 俺と秋兄の決定的な違いなどわかっている。
 それは年の差ではなく姿勢――歩み寄ろうとしているかしていないか。
 決して俺が歩み寄ろうとしていないわけではない。
 ただ、今の俺は意外と我が強い。
 少し前まで抑えこんでいた反動なのか……。
 本当は気持ちを抑制していた覚えだってないわけだけど……。
 それでも、今の自分の状態を「反動」だと結論付ける。
 どうしたら翠がまた自分の手を取るのか、とそればかりを考えてしまう。
 なのに、優しく接することもできてはいない。
 紅葉祭のあと――あのままの流れを維持できたのなら、俺も自然と優しくなれた気がするのに。
 そんな現実はない。
 こういうときに思い知る。
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