光のもとでⅠ
 すんなりいかないと思っていても、あのままうまくいくことを望んでいた自分の欲深さを。
 逆に、秋兄は自我をよくコントロールしている気がする。
 今までが今までなだけに、身に沁みて学習したのか、今は翠のペースを崩すことなく隣に並ぶ。まるで寄り添うように。
 前は俺もそんなふうに見えていたのだろうか。
 いや、違うな……。俺はこんな想いを知らなかっただけだ。
 好きだとは想っていても、こんなにも翠を欲してはいなかった気がする。
 気持ちの大きさが、深さが全然別物。
 秋兄は、最初から感じていたのかもしれない。
 この、手に負い切れない相手を欲する気持ちを。
 だから失敗したのだ。
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