光のもとでⅠ
 何もうまく運ばない。何もうまく運べない。
 けれども、秋兄に先を越されてばかりで悔しいはずなのに、秋兄がいつものペースを取り戻したことに俺はどこかほっとしている。
 危うい精神状態をやっと脱したような気がしてほっとした。
 それと、翠に関しては、一切手加減されていない。
 そう思えると、年は関係なく、対等に扱われることでイライラが少しおさまる。
「……俺、屈折してないか?」
 首を傾げながら家に帰ると玄関が開かれる。いつものように母さんの手によって。
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