光のもとでⅠ
 耳もとで囁くように、
「気持ちが追いつかなかったのね」
 その言葉にじわりと涙が浮かぶ。
 本当にそうなのかもわからないのに。
「翠葉……ごめん。キスマーク付けられたからって嬉しいとは限らないよね」
 飛鳥ちゃんが眉尻を下げる。
「小説の中だと女の子は喜んでいるのに、どうして私は違うんだろうってずっと考えていて、でもまだ答えは出ないの」
 ゆっくりとそう話す。
「私、今は恋愛無理なのかも……」
 そう言うと、
「どうして?」
 と、佐野くんに訊かれた。
 言葉にしたのが佐野くんだけど、みんな同じような表情をしていた。
「余裕がないの。今は体調を安定させて学校に通いたい。そのふたつで精一杯。それ以上は許容できそうにないの」
 佐野くんは「そっか」とすぐに納得してくれた。
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