光のもとでⅠ
 今までは、執着するものがなかっただけに諦める必要などなかったわけだが、今は固執する対象がある。
 見つけてしまった。出逢ってしまった。
 諦められない、どうしても――。
 敗北は己が認めない。敵前逃亡など自分が許さない。
 ――ならば、立ち向かうのみ。


 * * *


 先日のふたり――藤山の私道を翠と秋兄が並んで歩く姿が脳裏から離れなかった。
 まるで自分から翠が遠ざかっていくような錯覚を起し、恐怖感を覚えた。
 その残像をかき消すのに数日を要した。
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