光のもとでⅠ
 唯さんは毎日のようにバックアップを取っていてくれた。
 さらには、「器がダメになることもあるよね」と、携帯の本体も別のものに取り替えたと言う。
 そこまで考えていなかっただけに、どこまでマニアックな視点を持っているものか、と心底呆れた。
 呆れた反面尊敬もしたけど……。
 唯さん曰く、守るべきは翠がもともと持っていたものであり、壊れたからといって真新しいものに交換するのでは意味がないという。
 翠の携帯にはデコレーションという飾り付けが一切されていなかったため、この工作は簡単に済むはずだったが。が、どうやらそれは間違いらしい。
 もとの携帯と区別ができないようにするということは、普通に使用してついた傷を施す必要があるという。
 そこまでする必要があるのか、と思いはしたが、唯さんが手を抜くことはなかった。
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