光のもとでⅠ
 まず、同じ機種の携帯を用意し、その外観に翠の携帯とまるきり同じに傷をつける。
 傷をつけるというよりは加工。
 これはかなり骨の折れる作業だっただろう。
 そのあとは、中の基盤に翠の携帯から取り出した情報をそっくりそのまま上書きする。
 それにストラップを付け替えて完成――そのはずだった。
 しかし、唯さんはさらなるトラップを仕掛けた。
 翠の携帯をコピーしようとしたり、翠の携帯に登録されていないアドレスにデータを転送しようとすると、転送先のパソコンやモバイル、メモリが壊れるというウィルスを仕込んだ。
 ご丁寧にも、すぐにばれないように、とウィルスが作動するまでには適度なタイムラグが儲けられている。
 ウィルスは作動するだけで相手方のネットワークすべてに拡散する仕組み。
 一番手っ取り早い赤外線通信は使えないようにプログラムを書き換えたらしい。
 こういうことがもともと得意なだけあって、やることが半端ない。
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