光のもとでⅠ
 ノートパソコンを持ってきていれば携帯を経由して確認できないこともはないだろうが、後ろめたいことをしているとき、人目につくことはしないだろう。
 ほかにできることといえば、アナログ行為。
 携帯のカメラ機能、もしくはデジカメで翠の携帯ディスプレイを撮るか、手書き描写。
 それくらいしか残されていない。
 だが、それすらもトラップだ。
 そう誘導されるようにトラップが仕組まれている。
 行動のすべてが唯さんに読まれている。
 アドレス帳の中身は、翠が使用するのには困らないよう実際のデータが入っている。が、ディスプレイに表示される番号やアドレスはでたらめ。
 翠が疑問に思わない程度に似せた数字や英字が並べられている。
 唯さんはどこまでも手を抜かずにトラップを仕掛けていた。
 ここまでくると、仕事というよりも趣味の域な気がしてならない。
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