光のもとでⅠ
 真っ暗な池の中で底と水面を交互に見る。と、どちらが上でどちらが下なのかがわからなくなりそうだった。
 いつものように、自分の身体で浮力を感じることがひどく難しい。
 間違えずにいられたのは気泡のおかげ。
 気泡が向かう先こそが水面。
 息継ぎに上がると、目の前に優太がいた。
「司、楽しそうなことしてるじゃん?」
 言いながら、まるでプールにでも入るみたいに池に入ってくる。その後ろから、
「準備運動はバッチリしてきたから! おまけに視力もいいよ!」
 久先輩が翠に声をかけたところだった。
 俺の顔を見るなり、にっ、と笑う。
「寒中水泳バンザーイ!」
 バカみたいに豪快に水飛沫が立つ入り方。
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