光のもとでⅠ
「「司っ」」
 姉さんと秋兄の声が聞こえた。
 でも、止まることはできない。
「司っちっ……」
 唯さんの声が一番はっきり聞こえたけれど、その声にすら立ち止まれはしない。
 申し訳なくて……。
 自分が愚かで申し訳なさ過ぎて……。
 教えてくれていたのに。
 唯さんは、翠にとっての携帯がどんなものであるのか、一番詳しく教えてくれていたのに。
 俺はそのほとんどをスルーして見落とした。
 ――「準備が間に合わないっていうのもあるんだけどさ、これはリィにとって特別なものだから。すり替えは無理だと思う」
 唯さんはそう言っていた。
 ストラップやとんぼ玉、鍵の代わりは作れない、と。
 俺はその意味を十分に理解していなかった。
 だから、こんなことになったんだ。
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