光のもとでⅠ
「力を見せろ」とは、采配力ではなく、俺自身の器量を量るという意味合いが強かったのだろう。
 今ならわかる。
 渦中にいる翠と一緒にどうすればいいのかを考えれば良かったのだ、と。
 携帯が狙われる可能性があるのなら、こまめにバックアップを取る。替えのきかないものだけは別にしておく。
 翠に開示することで、シンプルではあるものの、確実な策を講じることができた。
 それなのに、俺は判断を誤った。
 己の選択ミスで翠を傷つけた。
 池に入る羽目になったのは翠のせいじゃない。
 俺が最初の部分で判断を誤っていたから。
 ほかの誰でもなく自分の過失。
 そのことにもう少し早く気づけていたら、もっと別の対応ができていたかもしれない。
 今となってはあとの祭り――。
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