光のもとでⅠ
 一頻り自分を責めると、次は自己擁護に回りたくなるものらしい。
 自分を責める一方、翠に対しての苛立ちもないとは言えなかった。
 冷える場所にいたら身体に障る。
 身体の替えがきかないことくらい翠にだってわかるはずなのに、どうして最後の最後まで携帯を優先させた?
 携帯がそれほど大事かっ!? 自分の身体よりもっ!?
 ふざけるなっ――。
 そうは思うのに涙が出てくる。
 翠が自分の身体より優先したものの中に、「自分」が含まれていたから。
 たかが録音された声、たかがメール、たかが露店で買ったとんぼ玉。
 それらが翠の身体よりも大切に扱われたことがひどく嬉しくて、悔しくて……。
 想いは相反し、複雑を極める。
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