光のもとでⅠ
「……あり、がとう」
 ケンに、というよりも、ここにいる四人に言ったつもり。
 でも、慣れない。
 この面子に礼を言うことすら慣れていない。
 翠のことを世間知らずとか言っているけど、俺だって人のことは言えない。
 似たようなものだ……。
 自身のことなど全く見えていなかった。
 見えていたつもりで、わかっていたつもりで、何もわかっていなかった。
「ほら、行き先の選択肢、六ヶ所になったけど?」
 再び朝陽に訊かれる。
「ほかの家」――しがらみなど何もない家には興味があった。
 けど今は――。
「俺のとこにしときなよ」
 絶妙なタイミングで久先輩の声が割り込み、俺はそれに頷いた。
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