光のもとでⅠ
「お疲れのようですね。差し支えなければ私が代わりに行きますが」
「とんでもない。日下部さんだってお疲れでしょう。一昨日から家にも帰らず社に寝泊りしているんですから」
「それは秋斗様もお変わりないでしょう。皆交代で仮眠は取っております」
 普通の会話に笑みが漏れる。
「どうかなさいましたか?」
「すみません……。なんか不思議で」
「何が、でしょう?」
 日下部さんは少し困惑しているようだが、そこから変なプレッシャーはかけてこない。
 五十を過ぎてがっしりとした体型。顔が四角く、まるで将棋の駒、王将を彷彿とさせる。
 正直に言うと非常に強面で、初対面の人は話しかけづらいと思うだろう。
 しかし、彼が纏う気はとても穏やかで健やかなものと感じる。
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