光のもとでⅠ
 翌日、少し早目に家を出て藤山に向かった。
 ここにきて顔を出さないのもあれだから、仕方なく庵にも顔を出す。
 今日、ここ藤山に翠葉ちゃんと司が来ることになっているのなら、じーさんが不在なわけがない。
 ドアを軽くノックして中へ入ると、
「何か? 若者の邪魔でもしに来たのかの?」
 いつもと同じように和服に身を包み、ひゃひゃ、と笑うじーさんがいた。
「ちょっと……それじゃ俺が年寄りみたいじゃないですか。自分と同列に扱うのやめてくれません? 俺、若者真っ盛りの二十六歳。じーさんと一緒にしないでください」
「まぁ、よいわ。コーヒーを淹れてやろう」
「毒とか入れないでくださいよ?」
 本気で毒を盛られるとは思っていないけど、なんとなく、だ。なんとなく……。
 じーさんは何を答えるでもなくこちらをちらりと見る。と、小さな小瓶に手を伸ばした。
 本当、そういう細かい演出してくれなくていいから……。
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