光のもとでⅠ
 呆れつつも懐かしいコーヒーの香りを堪能していた。
 もう久しくコーヒーは飲んでいない。
 コーヒーを淹れているじーさんの背中を見てドキっとした。
 一瞬、息をするのを忘れたと思う。
 ずっと容赦なく怖い人だと思っていて、自分はまるで敵わないと思ってきた。
 今もそれは変わらないのに――その後ろ姿は思っていたよりも小さい。
 まじまじと見て切なくなるくらい。
 その姿は俺よりもずっとずっと小さくて、軽そうだった。
 いつの間にこんなに小さくなったんだろう……。
「ほれ、じぃの特製コーヒーじゃ」
 差し出す手には乾いた土がこびりついていた。
「……つーか、じーさん。コーヒー淹れるときくらい手ぇ洗おうか?」
「ふぉっふぉっふぉ、土くらいどうってことないじゃろ?」
 右手でカップを受け取り、左手で額を押さえる。
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