光のもとでⅠ
 前髪の隙間からじーさんのしわくちゃな手をじっと見つめた。
 自分の手を包み込むように握った、あの大きな手ではない。
 今あるのは、しわくちゃで肉付きの悪い骨ばった手。
 その手が生み出す陶器を彼女は好きだと言っていた。
「じーさん」
「なんじゃ?」
「お願いがあるんだけど……」
「ほぉ、珍しいのぉ……。じゃが、司の件は違えないぞ?」
「その件じゃない。もっと私的」
「なんぞ、言ってみよ」
「俺にカップ作ってよ。コーヒーカップでもなんでも……金はちゃんと払うから。お願いはその先――俺のためだけに作ってほしい」
 じーさんは目を細めて笑った。
「もう作ってあるわ。ただし、渡すのはもう少し先じゃ」
 そう言うと、カップを自身の脇に置き、土を捏ね始めた。
 話しはここまで――雰囲気でそれを感じ取る。
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