光のもとでⅠ
 コーヒーを飲み終えると、俺は山の花を摘みながらばーさんの墓へ向かった。
 墓石に水をかけ、御影石を丁寧に磨く。
 実際は、磨く必要もないくらいにきれいにされているわけだけど、そこは気持ちの問題。
 両脇にあるふたつの花器にも花を足す必要はない。
 きれいな花が十分な鮮度を保っていけられている。
 俺は豪勢な花の真ん中に摘んできたそれを横にして置いた。
 神頼みならぬ仏頼み。
 司のことをばーさんに頼みにきた。
 現状、俺はどうしてやることもできないから。
 司がどう動くかわかっていても、俺にそれを止めることはできない。
 いや、本当は阻止しようと思えば阻止できなくもないけれど、俺の手が加わったら意味を成さない気がして――。
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