光のもとでⅠ
「あ――あのね、秋斗さんとこういう話をするのも怖いの」
「それじゃ前に進めないじゃん」
 飛鳥ちゃんの言うとおりだ。このままでは前には進めない。
 飛鳥ちゃんは飲み終わったグラスをトレイに戻すと、私が持っているグラスを置くかどうかを訊いてくれた。
 でも、何か手に持っているほうが落ち着く気がして、持っていることを伝える。
「ま、なんにせよこのご時世、私たちの年で結婚まで考えて付き合ってる人なんて少ないわよ」
 と、桃華さんがひとつの答えをくれた。
「秋斗さんはね、結婚まで視野にい入れて付き合うことを考えていて、でも、私にはそれができなくて……。なんていうか、覚悟ができている人とできてない人……? それでいいのかなって……。覚悟できているからこそ性行為まで求められているとして、覚悟できていない私は受け入れられないっていうか――怖い」
「……全部が怖いにつながっちゃうんだ」
 と、飛鳥ちゃんに言われて心の中で何かがコトリ、と音を立てた。
「ねぇ、ここまで話したから男ふたり中に入れない?」
 桃華さんの提案に飛鳥ちゃんとふたり頷いた。
 桃華さんが立ち上がり、ドアを開けてふたりを呼ぶ。
「話終わった?」
 海斗くんと佐野くんが入ってくる。
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