光のもとでⅠ
 キッチンに誘導してコーヒー淹れさせて、少し落ち着きを取り戻させようとしてくれただけ。
 悔しいけど、この場の誰よりもあんちゃんが上手(うわて)。
「……もういい。コーヒー淹れてくる」
「手伝うよ」
「別にいいってばっ」
 なんとなく気恥ずかしくて突っぱねる。
「でも、唯に任せたら人数分は淹れてもらえそうにはないからね」
 あんちゃんの顔を見上げると、「だろ?」と訊いてくる。
「当たり前っ」
 この場にいる人間のコーヒーなんか絶対に淹れてやるもんか――そう思ったけど、俺はあんちゃんの同行を拒否しなかった。
 言いたいことを存分に言って、そんな俺を否定はせずに受け入れてくれる人間だったから。
 あんちゃんがそういう人だったから、なんか毒気を抜かれたんだ。
 御園生の人間は親も子も、みんな共通してそういうの持ってるから不思議。
 俺、どれだけ黒くなっても絶対に闇に引っ張られない自信がある。
 それは、今この家族がいるから――。
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