光のもとでⅠ
 あんちゃんは思っていることをひとつも口にはしない。
 傍観しているふうではないけれど、この件に口を挟もうとも入ってこようともしない。
 そのスタンスがどういったものなのか、俺には理解しかねるけど……。
 何もしないでいることができるほどの忍耐力を持っているんだと思う。
 ――「芯が揺るがない」。
 この言葉がピタリと当てはまった。
 あんちゃんのこの強さはどこから来るものなのかな……。

 コーヒーを落とし終わると、俺は自分と碧さんのカップにだけそれらを注ぎ、あとをあんちゃんに任せた。
「ごめん。やっぱ、今はあの人たちのとこに戻りたくないから」
 俺は夕飯のオーダーはせず、キッチンを出てリィの部屋へ向かった。
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