光のもとでⅠ
 碧さんはクスクスと笑い、
「コーヒーありがとね」
 と、マグカップを少し上げて部屋を出た。

 こんな状況でも碧さんはペースを崩さない。
 自信に満ち溢れた――オーラ、って言ったらいいのかな。
 今は自分の母親っていう人だけど、時々すごくきれいだなって思う瞬間がある。
 リィが体調を崩すと途端に脆い部分が露見するけど、それでも普段はものすごく気丈だ。
 オーナーが惚れたのがわかるくらいには。
 意識をリィに戻し、横になっている顔をそっと覗き込む。
 次の瞬間、息を呑んだ。
 閉じられていると思っていた目が開いていたから。
 人間の視野角は百八十度から二百度といわれている。
 今のリィは右を下にして寝ているから、左目だけで九十度前後。
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