光のもとでⅠ
 だから、何度言ったらわかるんだ……。
 携帯からなら誰がかけてきているのかわかるって……。
『ツカサっ、今から会いに行くからっ、だから会ってねっ』
 一気に言われて通話が切れた。
 ツーツーツー、とビジートーンが聞こえてくる。
 目の前にはおかしそうに笑いながら転がる塊がひとつ。
「くくっ、あははっ! 翠葉ちゃん最高っ! 司がちゃんと話さないからいけないんだ」
 話せと言われても何を話せばいい……?
「これから来るってよ?」
 来ると言われてもどうしたら――。
「司、逃げたらだめだよ。せっかくお姫様が出向いてくれるんだから」
 その言い方もどうかと思うけど……。
「城に篭りがちなお姫様がやっと自分から来てくれるんだよ?」
 言われたことに驚いて顔を上げる。
「貴重でしょ? そこで逃げたら男じゃないよ」
 先輩は言うだけ言って寝室へと戻っていった。
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