光のもとでⅠ

49~53 Side Tsukasa 02話

 翠を腕の中に閉じ込めた。 
 どこにも行けないよう、文字どおり、閉じ込めた。
 こんなふうに接するのは、運ぶとか抱き上げるとか、そういう移動目的を抜かせば過去に四回だと思う。
 四月、仮眠室に篭った翠が今にも泣きそうで抱きしめた。
 それから、十月の中間考査前。
 ゲストルームで泣き崩れていた翠に縋られたときと紅葉祭二日目、後夜祭のときと打ち上げの帰り道。
 あぁ、五回か……。
 記憶をなくす直前も、翠は俺の腕の中にいた。
 今はそのどれとも違う気持ちで抱きしめている。
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