光のもとでⅠ
 縋られているわけでも支えるためでもなく、不安定な自分が形ある確かなものを感じていたいがためだけに。
 翠は抱き寄せた際にバランスを崩したまま俺に体重を預けていた。
 声をあげたり身体を離そうとする一切の動きが見られない。
 これだけ密着していれば俺の鼓動の速さはばれているも同然。
 ……まさか、反応がないんじゃなくて、心音に絶句されてたりするのだろうか。
 顔が一気に熱を帯びる。
「翠」
 咄嗟に名前を呼んだけど、あとに続く言葉はない。
「ツ、カサ……?」
 翠はぎこちなく声を発し、首を動かそうとしているのが感じられた。
 さっきから何度となく顔を見たいといわれている。
 だから、今もそれを実行しようとしているのだろう。
 俺は腕に力をこめることで却下する。
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