光のもとでⅠ
 玄関の閉まる音がして、帰ってしまったことを実感する。
 視線を感じて海斗くんを見ると、
「あいつらは翠葉が寂しいって口にすればいつだって駆けつけてくれるよ」
 と、おかしそうに口にした。
「……また変な顔してた?」
「変っていうか……寂しそうに見えた。みんなさ、翠葉には笑っててほしいんだけど、でも、こういうときのそういう表情は別かな? 必要とされてるっていうか、別れを寂しいって思ってもらえることが嬉しいっていうのは変な話だけど。相手が翠葉だと拍車がかかって貴重なんだ」
 ……意味がわからない。でも、突き詰めて考える必要はなさそう。
「今度からは困ったり寂しくなったらすぐ連絡する……」
「うん。そうしてやって。もちろん、俺にもね。俺、翠葉からメールもらうのなんて、まだ五本の指で数えられるから」
 と、意地悪な顔をされる。
 でも、あまり自分からはメールしないし……。
 海斗くんは用事があるとメールではなく電話で用件を済ませることが多いから、メールという機能をあまり使わない相手だった。
「ほら、結構長い間起きてたんだから、夕飯までは休めば?」
「うん、栞さん呼んでもらえる?」
「いいけど、どうした?」
 不思議そうに顔を覗き込まれた。
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