光のもとでⅠ
「痛みは……?」
 目の前にある翠の後頭部に問いかけると、
「これなら大丈夫……」
 前方に放たれた言葉は、翠の身体を通して俺の腕に響いた。
 俺は腹を括り、今回じーさんに課されたものを翠に話した。

「最初から翠に話していれば良かったんだ。そしたら、携帯が池に落ちても翠が傷つくことはなかった」
 俺が選択を誤らなければもっと違う展開になっていただろう。
「もしも」という言葉は事象前と事象後では大きく異なる。
 事象前は「仮定」。事象後は「後悔」。
 シミュレーションゲームなら、仮定しきれなかった自分のミス、と潔く認めることができる。
 が、今回のこれは――。
「あのね、私、さっきお母さんに言われたの」
 翠がポツリポツリと話し始めた。
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