光のもとでⅠ
 湊先生は昨日のことには一言も触れない。ツカサのことも訊いてこない。
 今日の天気がどうとか、ニュースでこんなこと言ってたとか、当たり障りのない話をしながら夏に過ごした病室まで歩いた。
 時間は八時半を回っていたけれど、ナースセンターに相馬先生の姿はなかった。
「相馬は会議に出てるみたいだから、それが終わったら来るでしょう。それまでは寝てなさい」
 先生はてきぱきと心電図の用意をし、私の胸に吸盤を取り付けていく。
「何かあればナースコール。でも、心電図のモニタリングは院内でも私もやってるから、異常があれば人が来る」
「はい」
「寒くない?」
 学校の制服から検査着に着替え、袖は長袖から半袖に変わっていた。
 けれど、院内はどこも空調が利いていて室温が二十度前後に保たれている。それと、首元までかけられた肉厚な羽毛布団のおかげで寒いとは感じなかった。
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