光のもとでⅠ
「翠はこっち」
 司先輩の腕だった。
「それね、さっき司くんが作ったのよ」
 と、栞さんが教えてくれる。
 思わず司先輩の顔を見ると、
「そんなの誰でも作れる。生クリーム泡立てて中に缶詰のフルーツ入れるだけ」
「……あの、私まだ何も言ってないのですが……」
「言われた気がした」
「いえ、まだ何も……」
 そんな会話をしていると、
「ねぇ、ふたりっていつもそんな会話してるわけ?」
 海斗くんに訊かれた。
 そんなって……どんな?
「そうだな……基本、翠葉が何か話す前に司がその答えを言うな」
 答えたのは私でも司先輩でもなく、海斗くんの隣に座っていた蒼兄がだった。
「そうね、司くんは翠葉ちゃんの表情を読むのが上手よね」
 言いながら栞さんがクスクスと笑う。
「普段は人のことなんてどうでもいいって感じのくせにね」
 湊先生は口端を上げてケラケラと笑った。
 蔵元さんはその場の会話をじっと聞いているのみ。
「翠、今日は夕飯のあとになるからマッサージは頭のみね。じゃ、いただきます」
 先輩はきちんと手を合わせてからスプーンを手に取った。
 まるで今までの会話がなかったように、それはそれは見事に自分のペースを守る。
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