光のもとでⅠ
「昨日の人、どうしたかな……。今日、学校に来てたかな。それとも欠席だったかな……」
 そんなことを唯兄やお母さんが知ってるわけがない。わかっていても口にしたのは、本当は訊きたくて訊けないことがあったから。
 怖くて訊けないのは、「停学」や「退学」という処分が彼女に下ったかどうか、ということだった。
 私はあの人を叩いた。暴力をふるった。けれど、これといった処分を受けていない。それなら相手はどうなのか……。
 不安に思っていると、唯兄が教えてくれた。
「司っちから聞いてない? 俺の素晴らしい働きによって、あの子は法に触れることはできない状態にしてあった、って。……リィのオリジナル携帯は最初から保護されていたし、データが流用されないようにトラップも仕掛けてあった。彼女が罪に問われることにはならない状況が用意してあったんだよ。池に落とされた携帯も替え玉。強いて言うなら携帯の無断使用。使用窃盗罪が適用されるけど、リィが訴えない限り問題になることはない。今のところ、学校長から厳重注意ってお叱りを受けた程度のはず」
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