光のもとでⅠ
「放任主義って言葉もあるけれど、翠葉ちゃんのご両親はそうじゃないと思うわ。いけないことをして両親に叱られることはある?」
「それはもちろん……。何が悪くてどうしてだめなのか、理解するまで許してもらえません。簡単にごめんなさいって謝ると、そのことにも叱られます」
「本当にすてきなご両親……。それは翠葉ちゃんの考えや意見を尊重してくれているのよ」
 尊重……?
「放任主義というと、いけいないことをした子供を叱れない、注意できない親、という意味にもなり得るけれど、尊重はあくまでも尊重。間違ったことをすれば指摘をするし、必要なら叱りもする。でも、叱るだけじゃだめ。叱るだけなら誰にでもできるの。問題なのは、どうしたら叱られている理由を理解させることができるか。……言葉にするだけなら簡単。でも、自我を持った子どもに対し、それらを懇々と話して聞かせるのはとても骨の折れることよ。時間も根気も必要。そういうものもすべて含めて育児や教育というのだけど――『人』を育てるのってとても大変なことなのよ」
 先生の話はとても奥が深い。
 大人目線のことと、子ども目線の話。その両方を教えてくれていた。
 どちらの肩を持つこともなく、両者の真ん中に立っている人の言葉。
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