光のもとでⅠ
 リビングでお茶をしている栞さんと湊先生に声をかける。
「お風呂入ってきます」
「司くん、なんで機嫌が悪かったのかわかった?」
「あ……ちょっと嫌なことがあって、そのまま部活に行ったら的を外しちゃったみたいです」
「あら、珍しい……」
 栞さんは口もとに手を当てて驚いていた。
「今年初だから余計に不機嫌なのよ」
 と、湊先生。
 湊先生は不機嫌の理由を知っていたのね……。
 それにしても……本当に百発百中の人なんだ……。インハイ、応援に行けるといいな。
 そんなことを考えつつバスルームへ向かうと、洗面台のところに遮光瓶が置いてあった。
 ラベルにはサイプレスとゼラニウムと書かれている。
 あ、そっか……。もうすぐ生理だからだ。
 このエッセンシャルオイルのチョイスは生理前に出してくれるもの。
 婦人科系に効果があるもので、生理痛を緩和してくれる作用がある。
 その遮光瓶を開け、バスタブに数的落としてからお風呂に入った。
 ゼラニウムもサイプレスも、ちょっと青々しい香りで実は苦手。
 でも、この時期だけはそんなに苦手意識を感じないから不思議。
 お湯に落とした精油がところどころに油溜まりとなって浮かんでいて、それを指ではじきさらに細かく散らす。
 そんなことをしてのんびりとバスタイムを楽しんだ。
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