光のもとでⅠ
 お風呂から上がると栞さんに声をかけられた。
「蒼くんも若槻くんも翠葉ちゃんの部屋にいるわ。蒼くんがさっきお茶を持っていったから」
 私は栞さんにエッセンシャルオイルのお礼を言って、ゲストルームでの自室へと向かった。
 若槻さんはデスクの椅子に跨っており、蒼兄がベッドを背にラグに座っていた。そして、その手にはドライヤー。
「翠葉、まずは髪の毛を乾かしちゃおう」
 蒼兄のもとまで行くと、
「さっき栞さんから電話があって、もうすぐお風呂から出てくるって言われたから先に下りてきたんだ」
 と、若槻さんに説明されて謎が解けた。
 どうしてこんなグッドタイミングで? と思っていたところだったから。
「忙しいのにごめんなさい」
「リィとの会話は癒しだからいいんです。さらには治療混み! なんて画期的」
 こっちが本当の若槻さんなのだろうか。
 初めてホテルで見たときの印象とものすごく変わる。
 印象というよりは、モード、だろうか。
 ホテルで見たときは若いな、とは思ったけれど、どこにも隙がないような感じがした。
 でも、今は素、というか年相応というか――なんだろう。よくわからないけれど、今のほうがしっくりとくる。
 最初はスーツが普段着になったからかも、と思っていたけれど、服装とかそういうのではなく、話し方や接し方が全然違う。雰囲気が違うのだ。
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