光のもとでⅠ
 セックスとはどういうものか。そんな授業が始まった。
 単純な話、セックスとは男女が交わることをいう。
 小学生でも理解できるたとえ話なら、雄しべと雌しべが受粉し実ができる、だろう。けれど藤宮ではあえてそういったたとえ話はしないという。
 人の場合、受精は妊娠を意味し、子供ができることを指すから。
 わかりやすいという一面を持っていたとしても、少しでも「安易」と思えるたとえ話はしないらしい。
「それにね、人の性行為って植物にはたとえられない付加価値がたくさんあるのよ?」
 玉紀先生はにこりと笑む。
「好きな人のぬくもりを感じたり呼吸を感じたり、鼓動を聞いたり……時間や空間を分かち合うだけじゃ物足りなくて、心も身体も、感覚のすべてを分かち合おうとする行為。それがセックス、愛し合う行為よ」
 同じ空間で同じときを過ごすことなら誰とでもできる。でも、身体の感覚すべてを分かち合うのには相手に触れる必要があるのだと――それが、キスであり愛撫であり性行為なのだと先生は教えてくれた。
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