光のもとでⅠ
 またしても、私の目からは涙が零れる。どんなに我慢しようとしてもそれは止まらない。
「手、つなごっか」
 先生の手が前方から伸びてきて私の手を捉えた。
「冷たいね」
 言いながら、力の入った私の右手を開いては自分の両手で包みこむ。
 先生の手は私の手よりも小さかった。けれどその手はとてもあたたかくて、優しく手の平をマッサージしてくれている。
「こういうことからでもいいんじゃないかと思うの」
 先生は手を見つめながら言う。
「こうやって好きな人と手のマッサージをしたり、そういうことから慣らすこともできると思うの。セックスはね、心が伴わなかったら『すてきな行為』にはならないのよ。ピンポイントで気持ちいいと感じる場所を刺激されれば身体が反応することはあるかもしれない。でも、心が全面的に拒否してる状態じゃ苦痛でしかないわ。今、翠葉ちゃんが性交渉に挑んだところで苦痛にしかならないと思う。だから、無理する必要はないの。言ったでしょう? 心も成長するのよ、って」
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