光のもとでⅠ
 先生の言葉が優しすぎて、私はどうしようもなく甘えたくなってしまう。でも、甘えちゃだめだと思う自分もいて、どうしても楽になれない。
 そんなとき――。
「ところで……今すぐにそうならなくちゃいけない相手がいるの? それはうちの生徒?」
 訊かれて、「いません」と答える。
 先生はきょとんとした顔をして、次には小さくクスクスと笑いだす。そして、笑い声はしだいに大きくなった。
 今は右手を包んでいる両手が大きく揺れるほどに笑っている。
「じゃ、今、すっごく思いつめて考える必要はないわ。いつか大好きな人とお付き合いすることになったら、そのときに考えましょう? いつでも相談しにきて?」
 そう言って、先生はにっこりと笑った。
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