光のもとでⅠ
 蒼兄の前にちょこんと座ると、いつかみたいに頭の方から乾かし始め、徐々に毛先を乾かしてくれる。
 気分はトリミングされている犬のようだ。
 トリミングされている犬たちはさぞかし気持ちがいいことだろう、と思いながら、優しくて温かな風に乾かされていた。
 蒼兄の手も魔法を使えると思う。
 この手が頭にポンと乗るだけで、いつも私は落ち着いてしまうのだ。
 きっと、何かの魔法。
 十五分ほど乾かしてもらって、やっと乾いた。
「はい、完了!」
「その髪の毛、梳かしたい」
 若槻さんが控え目に挙手をしている。
「……いいですよ?」
 誕生日プレゼントで司先輩にいただいた柘植櫛を若槻さんに渡すと、
「渋いもの使ってるねぇ……」
「司先輩からの誕生日プレゼントなんです。でも、プラスチックのものだとどうしても静電気が起きるから、ずっと欲しかったものなんです」
「あぁ、欲しかったものがプレゼントでもらえると嬉しいよね。……因みに、秋斗さんからのプレゼントはなんだったわけ?」
「あ……えと、アレです」
 デスクに置いてある陶器のケースを指すと、
「見てもいい?」
 訊かれて、コクリと頷いた。
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