光のもとでⅠ
 若槻さんは入れ物に手を伸ばし、そっと蓋を開ける。
「あの人らしいっちゃあの人らしいね」
 と、苦笑い。
 すると、蒼兄と入れ替わりでベッドに腰掛け、私の髪の毛を梳かし始めた。
「で? リィのお話は?」
 蒼兄を見ると、蒼兄は苦笑を返した。
「あのね、さっき海斗くんたちにも同じような質問をして、それが男女間ではあまりしないお話であることはわかったの……」
 そう、そんなこととは知らなかったから、いつもと同じ気持ちで蒼兄に相談してしまったのだ。
 でも――。
 秋斗さんが望むもの。それを一番よくわかっているのは年が近くて同性である蒼兄や若槻さんなのかな、とも思う。
 立ち位置が近いというか……。十六歳や十七歳じゃない人の考えを知りたいと思う。
「いいよ、話して? だいたいの予想は今の前置きで見当ついたし。なんせリィだからね。あんちゃんとのやり取りを見ていると、あんちゃんは答えられなかったってところでしょ?」
 若槻さんの勘はなんて鋭いのだろう……。
 上目遣いというか、頭ごと真後ろにいる若槻さんを見上げると、クスクスと笑っていた。
「要は男女間のことじゃないの?」
 言われて頬が熱くなり、すぐに下を向いてしまう。
「まずはお茶でも飲めば?」
 と、テーブルにあるカップを勧められた。
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